01:通勤電車の少女

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 すっかり日常の一部となった、この通勤電車にちょっとした楽しみを見つけたのは、二、三週間ほど前のことだ。毎朝、俺が乗る車両に可愛い女子高生が乗ってくることに気づいたのだ。  彼女がどこから乗っているのかはわからないが、とにかく俺より前の駅から乗ってきて、俺より二つ手前の駅で降りる。いつも女友達と二人で乗っているが、話すのはほとんど友達の方だ。彼女は口数が少なく、一方的に話し続ける友達に、ときおりコクンと頷いて、肩にかかるストレートヘアをサラサラと揺らしていた。少し小柄で華奢な、可愛いけど、どことなく儚(はかな)げに見える女の子だ。  その彼女の姿を三日前から見ていない。昨日、一昨日はお喋りな彼女の友人が、一人ぽつんと乗っていた。今日はその友人の姿も見えない。しかし、同じ制服の生徒が何人か乗っているので、学校が休みというわけではないだろう。いつもこの時間、この車両、このドアの近くに乗ってたのに……。もしかして、時間を変えてしまったのだろうか? はあー。せっかく見つけた、ささやかな楽しみだったのに……。  さて、そろそろ彼女がいつも降りる駅に到着だ。今日はここで降りて引き返しちゃおうかな。もー、すっかりやる気も無くなったし……って、流石にそれは社会人としてダメすぎるな。いやしかし、やる気が無いのに無理やり仕事しても効率悪いしなあ……。  俺がそんなしょうもないことで迷っていると、軽い震動とともに電車が減速し始めた。間もなく駅に到着するという車内アナウンスが流れると、俺が背にしてるドア横の席で人が立つ気配を感じた。この駅で降りるんだな。ラッキー、席が空いたぜ! 俺の身体は空いた席を確保すべく、無意識に反応していた。さっきまで、この駅で降りようとか、結構本気で考えてたのに……人間の習慣って何か哀しいなあ。などと思いつつも、素早く振り返った俺の目の前に、あの娘(こ)が立っていた!  え? 今、座席を立ったのは彼女だったのか! うわ、びっくり! まさか、すぐ後ろに座っていたとはっ! 車内を見回したとき、目の前の席が死角になってたようだ。これが灯台下暗しってやつか!
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