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「もうレストラン予約済みよ」
「うわーっ、ありがとう楽しみだな」
飛び上がってる葉子を見ていると、千江もいいことがあった気がして、うれしくなる。やっぱり、いくらケンカしても、双子なんだね。
でも、いくら待っても迎えは来なかった。二人は一緒のかさに入って、震えていた。
「遅いね…」
千江は不安になって、葉子に尋ねた。いつもなら15分とかからないはずだが、すでに30分経過している。
「どうしたんだろうね」
「安心しなよ。レストラン行くから、お母さんがお化粧に手間取ってるのよ」
葉子はそう言って、千江をなだめた。
─さらに10分が過ぎた。
「おかしいよ、なにかあったのかなぁ…」
今度は、千江は泣きそうな声で、葉子を揺すった。
「もう一度電話してみるからさ。お父さんの携帯電話に」
でも、つながらなかった。ますます不安がる千江に、
「運転中だから、電源きってあるだけだよ」
となぐさめたが、もう千江はいてもたってもいられない様子で、
「怖い、怖いよ、なにかあったんだ…」
「だいじょうぶだって」
同じ年齢。葉子だって、不安で、胸が張り裂けそうだった。でも、ここで自分が崩れてしまう訳にはいかない。
携帯電話が鳴った。表示を見ると非通知だった。怖かったけど、葉子はとりあえず、
「はい、扇葉子ですが…」
「あ、扇和夫さんのご家族ですか?」
「そうですけど」
「私、F病院の者ですが、扇さんの夫婦が事故に遭われて、今、この病院で治療しているので、至急、こちらへ来てもらえますか」
「は…」
一瞬訳がわからなくなった葉子は、気のぬけた返事をした。千江は相変わらず心配そうに、
「ねえ、お父さんからなんでしょ、代わってよ!」
「うるさい!」
葉子はその場にうずくまり、泣き崩れた。
F病院へは、咲子先生の車に乗せていってもらった。到着するやいなや、医者に両親がいる集中治療室へ案内された二人は、言葉を失った。信じられなかった。これが現実だとは。親が、様々な機器囲まれ、包帯で体中を縛られ、人工呼吸器を当てがわれている。父親がいつ死んでもおかしくはないと、二人は直感的にわかった。
「お父さん…、あれっ、お母さんがいないよ…」
千江が耐えられなくなって、中に入ろうとすると、医者に制止された。
「これを着て、入りなさい」
二人とも医者の指示された服と帽子を着用し、中に入った。
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