2枚の楽譜

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2.  雪国の雪は、止むことを知らない。空はいつまでたっても、鉛色だった。  金庫を開ける気力もない二人の姉妹は、あれから冬休みに入り、気の抜けたように毎日を過ごしていた。今日も、千江が気の抜けた表情で、こたつに入り、お正月のスペシャル番組を眺めていた。 「楽しそうだなぁ…」 思わず、千江はそんなため息をもらしていた。 「ほらっ、ぼーっとしてないで、おせち料理を運ぶのを手伝いなさいよ」 葉子が作るおせち料理は、いつになく手が込んでいる。異常なほど、精密な料理を未定、千江は、 ─お姉ちゃんも寂しいんだな。 とわかってしまった。  それからまた時が流れ、2月になっても、二人は学校へも行かず、父親の貯金に頼って生活していた。 「お姉ちゃん、お腹すいたー」 千江の甘えぶりは相変わらずであった。 「わかったわ。今日、銀行でお金を引き出してくるから。今夜はおでんでパーッと、やっちゃおう!」 「やったー」 千江の喜ぶ表情を見ていると、葉子の悲しみも、とりあえず一時的には安らぐのであった。 「すみませんが、もうお取引はできません」 銀行員にそういわれ、葉子は戸惑った。 「そんなはずはありません。だって、まだ…」 と、葉子は声をひそめて、 「3000万円はあるはずなんです」 「差し押さえられています」 葉子は呆然となって、次の瞬間、頭の中で、今までの経緯が1本につながり、やっと事情を理解した。 ─千江があぶない!  裁判が終わったのだ。赤信号無視、スピード違反で、扇和夫側の全面敗訴が、確定したのだ。賠償金、慰謝料の請求額、2億円。  葉子の予想通り、千江は家を追い出されて、制服を着せられて、震えていた。 「お姉ちゃん、急に怖いおじさんが来て、それで、もう、この家から出て行けって…、なにがなんだかわからないよ…」 「わかった。あとは、お姉ちゃんに任せて」 葉子は、急いで自分の家だった所へ入り、 「ちょっと、どういうことよ」 もう家具や電化製品など、金目のものは全て持ち去られていた。サングラスを掛けた、パンチパーマのヤクザ風の男が、がらんとした家に立っていた。 「あれ? 文句あんのかしら。合法的なんよ、これ」 男はさも得意そうに、裁判結果の書類を葉子に突き付けた。 「私たち、今夜はどうするんですか、凍死しちゃうわ…」 「しらねえよ、じゃあな」
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