夕暮れの京、狂う歯車

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………………。 「ん……?」 私は、赤々と燃え盛る夕陽の眩しさで 目を覚ました。 でも、頭が働かない……。 私、どうしたんだっけ? 「ここ、どこ?」 それが、一番最初に湧き出てきた疑問だった。 「…………。」 辺りは一面、原っぱ。 見渡す限り、あるのは草の緑色と タンポポの黄色だけ。 どうしよう。そう悩んでいた時だった。 「そこで何してるんですか?」 女の人の声が降ってきた。 こうして迷っている時に人と巡り会えるなんて、 今日はついている! 「あの、ここ、どこだか分かりますか?」 私はあくまで、大真面目にこの質問を 投げかけたつもりだった。 なのに、一体どうしたのだろう? 女の人は、口元を押さえてクスクスと笑い始めた ではないか。 「あ、あの……?」 「あなた、寝ぼけてます?」 確かに、私は今の今まで眠っていましたけど。 でも、だからと言ってここまで笑われるのは さすがに心外だ。 「ここは、京の都。何当たり前の事聞いてるん ですか?」 女の人は、またクスクスと笑いだした。 だが、それを不快に思う気持ちはすぐに消えた。 何故なら―― 「ここが、京都……!?」 女の人が言った言葉が信じられなかったからだ。
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