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「…行って来る。」
質問には答えず立ち上がると、ゆっくりと兵藤の元に向かう。
渡り廊下で会ったのは週末だったからか、週半ばには既に兵藤の事など忘れかけていた。
呼び出しされるなどと思ってもいなかった俺は兵藤に近付くと何と言って良いか分からず、どーもとおざなりな挨拶で済ます。
「あの時は助かった。」
兵藤はチラリと俺に視線を向けたが直ぐに逸らして、それでも滑舌の良い言葉でそう言うと小さく頭を下げた。
「別に良いって。それよりもう大丈夫なのか?」
お礼を言いに教室に来るくらいだから律儀な奴なんだろうが、もっと高圧的な態度を取るのかと思っていただけに肩透かしを食らった気分だ。
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