59人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな俺の態度を物ともせず、兵藤は詰るように言うとクルリと踵を返す。
「マジで行くのか?」
うんざりした気分で兵藤の背中に向かって言い放つと、ゆっくりと振り返った兵藤は俺の方に三歩近付いた。近過ぎる距離に意味もなく威嚇するとちょっと眉を顰めた兵藤が俺を見上げた。
「行く。」
そして、微かに口を尖らせた兵藤はプイと横を向く。
それは何とも形容しがたい表情だった。馬鹿にしている訳でもなく、喧嘩を売っている訳でも嫌々でもないらしい兵藤のその顔つきは一体何なのか。
考えても上手い言葉は見つからず、何だか先程までの苛立ちも馬鹿馬鹿しくなり俺は深い溜息を吐いた。
「分かったよ、付き合えば良いんだろ。」
半分やけくそでそう言うと兵藤を追い越して歩き出す。
最初のコメントを投稿しよう!