出会い

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「おい、大丈夫か?」 声を掛けたが、張本人は自分に話し掛けられたと気付くまでに時間が掛かった。そして、やっと自身に掛けた声だと分かったそいつはのろのろと顔を上げて俺を見た。 「あ、」 思わず漏れた声だったが、相手には聞こえなかったらしい。そいつは眇めた目で俺を見たが、焦点の合わない目は直ぐに伏せられる。 日に透けても漆黒の髪はサラリと額に覆い被さり、目元に影が覆う。 高校男子としては平均的な体格にあっても、スラリと伸びた白い腕が華奢な雰囲気を醸し出すこの男。少し長めの髪は首の辺りにまとわりついて、少し見えた項が何故か色っぽく感じるのは男子校という空間だからなのか。 こいつの名は兵藤将爾(まさや)。
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