出会い

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思ったよりも低めの声は不機嫌そうな音色で吐き出され、一緒に深い溜息まで吐いた兵藤は柱に凭れかかったまま立ち上がろうと腕に力を入れた。 口だけは高圧的だけれど、身体は思うように動かぬ兵藤は必死に立ち上がろうとするも生まれたての小鹿のようにブルブルと足が震えて、結局その場に座り込む。 「仕方ねえな。」 折角親切に声を掛けてやったのに可愛気のない態度を取られて無下にされた腹立たしさを感じながらも、本当に具合の悪そうな兵藤を放って行くことは憚られて腰を上げる。 「保健室に連れて行ってやる。」 兵藤の返事を待たずに俺は兵藤の左脇から体を差し込んで担ぎ上げる様に立ち上がらせた。 平均的な体格の兵藤だが、身体を鍛えている俺にとって大した事じゃない。それに思ったよりも軽い兵藤の身体は抱きかかえて歩ける程だ。
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