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「おい。」
声を掛けながら腰を屈めて兵藤の顔を覗き込むと、随分苦しそうな表情で荒い息を吐きながら焦点の定まらない瞳をゆるりとこちらに向けた。
「苦しそうだな。」
見れば弓道着の袴の帯が身体を締め付けていて、これでは横になっても身体は楽になりそうもない。
「袴脱げば?」
兵藤の行動を促すように口にした言葉もあまり頭に入ってはいかないらしい。俺を睨みつけるように見つめた兵藤はゆらりと揺れてベッドに倒れ込む。
「おい、そのままじゃ苦しいだろ?」
人が折角気遣ってやっているというのに兵藤はお構いなしで寝転がったまま手の甲を額に押し付けて知らんふりだ。
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