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「寄り道をすんなよ。」
果物を見て、寄ろうとした、リぺルと理佳の襟を掴んで呼び戻した。
「だてぇ、リンゴが私を呼んで…」
「うむ、珍しい果実があったのでな。」
「んなもん、後で買ったらぁ。」
ケーキ屋へ続く道へと戻った。
「ホントにこっちであってんのかよ。」
道とは思えないほど草花が生い茂っていて、大きな木も生えていた。
「こっちだったんだけどなぁ。おっかしいなぁ。あっ、あれかも!」
理佳が指差す方を見てみると、ケーキ屋 リンドウと書いてあった。
あれだな、と思った。
木造の建物……
そういえば、いたな、自然を生み出し、操る天魔が。
あの時のビジョンのおかげで、天魔の力は思い出してきた。
まだぼんやりだが。
「開いてるかな。」
ドアノブに手をかけ捻ってみた。
ガチャ
「開いてる。」
俺はそのまま扉を開けた。
中に入ってみると、一人のシェフがいた。
黙々と開店の準備を始めていた。
「そろそろ来ると思ったよ、神造。」
「わりぃな、お前が名前覚えてても、俺はお前の名前は知らねぇんだ。だが、その直感、天魔だろ?」
「そうか、まだ記憶を失ってるんだね。」
「だが、俺が一人だったことは、ある人のおかげで思い出したよ。」
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