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「中学のとき、俺が声かけただけで女子があいつに酷い事言ったんだ。」
狐下はそう言った。
「だから、声かけずらいんだ………皆も同じ気持ちだと思う。」
「…………酷い話だな。妖怪だからって嫌うなんて。」
北沢は怒りを抑えながらそう言った。
すると狐下は、
「だから気安く声かけないほうがいいぞ。これは市原ためでも、お前のためでもあるんだからな。」
そういって、狐下は自分の席に戻っていった。
【声かけないほうがいいってことはないだろ…………何とかしてあげたいな…】
・・・・・・・・・・
「じゃあ、以上で話は終わりだ。気を付けて帰れよ。」
担任の長い話が終わりやっと解放された皆は帰る準備をしていた。
「なあ、市原。」
北沢は市原に声をかけた。
少し教室がざわめく。
「……何ですか。」
不思議そうな顔をした市原。
「一緒に帰らない?」
女子がひそひそと話す声が聞こえる。
「えっ、でも………」
「いいだろ、行くぞ。」
戸惑う市原を強引に連れ出す北沢。
すると途中で掴んでいた手を離される。
「市原?」
市原は俯きながら言った。
「……何でですか?」
「何でって?」
少し困った顔をした市原。
「狐下君から聞いたはずですよね、私は妖怪だって、嫌われているって。何で構うんですか?妖怪だなんて気味が悪いだけでしょう。」
少し不安そうな顔をして北沢に言った。
「……気味が悪いなんて思わねーよ。」
「………えっ………」
以外な北沢の返答に驚きを隠せない市原。
「それに妖怪とか関係ない。市原は市原だろ。それに俺はしってる。」
「………?」
「市原は中学の時放課後皆が帰った後、教室が汚れてたら掃除していたこと。花瓶の花の水かえを毎日していたこと。皆が困っていたら陰ながら助けていたこと。」
「…………」
「俺は全部知ってる。市原はだれよりも優しくて強いことを。」
「……でも私は妖怪………」
下を向く市原。
「妖怪なんて関係ないって言ったろ。俺はその時思ったよ、妖怪でも優しい心があるって。」
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