出逢い

6/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
すると市原は目に涙をうかべて言った。 「ありがとう…。」 こっちを向いてそう言って微笑んだ。 今にもこぼれ落ちそうな涙はその一言で頬をつたって流れた。 市原はその一言を言うと走って帰っていった。 北沢は市原の不意の微笑みに胸を高鳴らせた。 市原の初めてみた微笑みは儚く、綺麗だった。 北沢は心を掴まれたようにその場に立ち尽くした。 次の日 北沢はいつもより遅めに教室に入った。 すると、 「化け物のくせにでしゃばんなよ!」 「お前みたいな化け物が普通に暮らしていけるとおもってんのか!」 「お前みたいな化け物と同じ空気吸いたくない!」 市原を囲み、罵詈雑言をあびせる女子生徒がいた。 「お前ら何やってんだよ!」 北沢は市原のもとに駆け寄った。 市原はとても悲しい表情をしていた。 「お前ら市原に謝れよ!」 北沢は精一杯の怒号を女子にあびせた。 「真宏君、だってそいつは化け物だよ。」 「真宏君にも何するか分かんないよ?」 北沢の怒号に怯えた女子は怯みながらも言った。 女子の言葉にイラついた北沢は自分の思いをぶつけた。 「市原はそんなことしない!市原はここにいる誰よりも優しいんだ!市原にそんなことを言うお前らが化け物だよ!」 北沢の言葉が相当応えたのか何も言えなくなる女子。 だがリーダー格の子が言った。 「真宏君はどうしてそんなに市原さんをかばうの?」 全員が気になった事をリーダー格の女子は言った。 すると北沢は、 「好きだからだ!!」 大きな声でそう言った。 「えっ………」 市原が驚いた顔をした。 だがその頬は赤く染まっていた。 「えっ、えぇ~」 教室にいた全員が驚く。 「えっ、そうだったの?」 「マジか」 口々にそう言う。 女子達は北沢の気迫に負けて、 「市原さん、ごめんなさい。」 そう謝った。 放心状態だった市原は女子達の言葉で我に返った。 狐下は北沢の思いがけない告白に大爆笑し、北沢はそんな狐下を叱責した。 市原は北沢のおかげで女子達との関係を改善し、北沢と市原はしばらくの間、学校じゅうの話題となった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!