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すると市原は目に涙をうかべて言った。
「ありがとう…。」
こっちを向いてそう言って微笑んだ。
今にもこぼれ落ちそうな涙はその一言で頬をつたって流れた。
市原はその一言を言うと走って帰っていった。
北沢は市原の不意の微笑みに胸を高鳴らせた。
市原の初めてみた微笑みは儚く、綺麗だった。
北沢は心を掴まれたようにその場に立ち尽くした。
次の日
北沢はいつもより遅めに教室に入った。
すると、
「化け物のくせにでしゃばんなよ!」
「お前みたいな化け物が普通に暮らしていけるとおもってんのか!」
「お前みたいな化け物と同じ空気吸いたくない!」
市原を囲み、罵詈雑言をあびせる女子生徒がいた。
「お前ら何やってんだよ!」
北沢は市原のもとに駆け寄った。
市原はとても悲しい表情をしていた。
「お前ら市原に謝れよ!」
北沢は精一杯の怒号を女子にあびせた。
「真宏君、だってそいつは化け物だよ。」
「真宏君にも何するか分かんないよ?」
北沢の怒号に怯えた女子は怯みながらも言った。
女子の言葉にイラついた北沢は自分の思いをぶつけた。
「市原はそんなことしない!市原はここにいる誰よりも優しいんだ!市原にそんなことを言うお前らが化け物だよ!」
北沢の言葉が相当応えたのか何も言えなくなる女子。
だがリーダー格の子が言った。
「真宏君はどうしてそんなに市原さんをかばうの?」
全員が気になった事をリーダー格の女子は言った。
すると北沢は、
「好きだからだ!!」
大きな声でそう言った。
「えっ………」
市原が驚いた顔をした。
だがその頬は赤く染まっていた。
「えっ、えぇ~」
教室にいた全員が驚く。
「えっ、そうだったの?」
「マジか」
口々にそう言う。
女子達は北沢の気迫に負けて、
「市原さん、ごめんなさい。」
そう謝った。
放心状態だった市原は女子達の言葉で我に返った。
狐下は北沢の思いがけない告白に大爆笑し、北沢はそんな狐下を叱責した。
市原は北沢のおかげで女子達との関係を改善し、北沢と市原はしばらくの間、学校じゅうの話題となった。
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