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(黒川さん…)
麻奈の千晴に対する気持ちを知っていた由里は気まずそうに目線を下におとした。
「ふん…」
千晴の鈍感さに苛立ちを隠せない麻奈は、露骨に不機嫌そうな表情のまま、そっぽを向いている。
「ち、違うよ!そんなんじゃ…」
「じゃあなによ」
一見、クールで時折、髪を手で払ったりなど大人びた仕草をする麻奈。
「あの、赤城さん…黒川さん…そろそろ先生が来られますよ」
おしとやかで可愛らしい顔立ちをした癒し系の由里。
二人とも異性からは人気がある。
「まーまー。朝からそんな態度だと千晴も困るだろ?」
すると、麻奈と由里の背後から湧き出るように安藤が姿を現した。
ーさわさわ
安藤はそう言いながら由里と麻奈が反応するよりも前に背後から二人の尻を撫でた。麻奈に対しては胸も触る。
「うへへ」
「ひゃっ!?」
にやけ面の安藤に尻を撫でられた由里は瞬時に顔を真っ赤に染めて小さな悲鳴を上げた。
「……」
―ゴ‥!!
「ビゅグッ!!?」
安藤に尻を撫でられ、立て続けに胸も撫でられた麻奈は無表情で安藤の顔面をグーで思いきり殴り飛ばした。
…麻奈の額には一筋の青筋が浮き出ている。
「ぉごごおおお!!」
麻奈に殴り飛ばされて床の上で勢い良く転がる安藤……
やがて、無表情のままの麻奈が仰向けに転がった安藤にゆっくりと近づき、安藤の上にまたがると、殴打、殴打、殴打の繰り返し。
容赦のない麻奈の鬼のような姿に、恐怖心を抱いた千晴は小刻みに震えながら、安藤の生命に危険を感じた。
「ちょ、…!ごめんつい出来心で……痛ッ…!ごへ!せ、せめてなんかしゃべろうよ!!無言だと怖いから無言だと…ッ!」
必死になって麻奈を説得しようとする安藤に構わず、青筋を立てたままの麻奈は馬乗りで安藤を殴り続ける
表情が…ものすごく怖いです。
「マジでキレてるっぽいから無言だとおおおおおお!!」
「マジでキレてんのよ!!このセクハラ!」
「ママぁ~ヘルプミイ!」
「ごまかすなっ!!」
「け、けんかはダメですー!」
見るに耐えられず千晴は机の上に顔を伏せた。
一度暴走した麻奈はもはや誰も止めることは不可能だ。
安藤が無惨にやられていくのを見過ごすしかないだろう…
しかし、全ては安藤の自業自得だ。
(あ、れ…)
急にまぶたが重く感じた。
目の前の騒音が途切れ途切れに聞こえ、なんだかとても遠く感じる――
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