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ネロに引っ張られるように俺は街にやって来た。
「ふむ、たまには自分の足で歩き回るのも楽しいものだ」
「おい、ちょっと待てったら……!」
ネロは元が神姫なためか歩くのが異常に速く、ついて行くのにも一苦労だった。
「どうしたマスター?もうへばったのか?」
「ちょっ……バッカお前……!」
急いでネロの口を塞ぐ。
周りの通行人がチラチラとこちらを見ているのが痛いほどわかった。
「……どうした?」
「お前は今中身は兎も角外見はまんま人間なんだぞ?」
「そんなことはわかっている」
「……あのな、人のことマスターなんて呼ぶ奴、まず居ないぞ……」
「……あぁ、なるほど。ではなんと呼べば良い?」
「……名前で呼べ」
「わかった」
「あとお前歩くの速すぎ」
「……ではこうしよう」
突然ネロが俺の手を握った。
「い……!?」
「駄目か……?」
人間化してもネロは俺より背が低い。
そんなネロが上目遣いで、しかも甘えたような声で言ってきた。
「……好きにしろ!」
そう言うのが精一杯だった。
「ふふ……では行くぞ、大地」
「お、おう」
ネロに手を引かれるままついて行く。
それからネロは歩くスピードを俺に合わせるようになった。
横に並んで手を繋ぎ、街を歩く姿はまさに……。
「マ……大地、顔が真っ赤だぞ?大丈夫か?」
「いや……体は大丈夫だ……」
心はまったく大丈夫じゃない訳だが。
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