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「遅いなあいつ……」
かれこれ30分近くはこの辺りをさまよっているが、ネロは一向に帰ってこない。
「あれ、天海くん?」
一瞬体が硬直の勢いで飛び跳ねそうになった。
ゆっくりと振り返るとそこには見知った二人が立っていた。
「よ、よう、犬飼。それと陽輔」
「それとってなんだよ」
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
「何でお前らがここに?」
「私の服を見るのを手伝ってくれてるんだよ。一応天海くんにも連絡したんだけど……」
「マジで?」
ポケットに手を突っ込むが何もない。
ケータイを家に忘れてしまったようだ。
「あー、ケータイ忘れたな……」
「そっか、じゃあ仕方ないかな?」
「つーか今から合流すれば良いじゃねぇか」
「いや、ちょっと用事があるっていうかなんというか……」
「なんだよその言い方?」
正直二人には早くこの場を去って欲しかった。
あいつとこいつらを会わせてはいけない。
確実に面倒なことになる自信があった。
「あぁ、大地。ここに居たか」
背後からの声に脊髄反射で行動した。
素早く振り向き、接近。
更に口を塞ぐ。
「むぐ……」
「天海くん、その人は?」
「見たことない顔だぞ?」
「こ、こいつは……その……そう、幼馴染みの……黒子っていうんだけどな、こいつがどうしても街を見てまわりたいってうるさいから俺はその付き添い……的な?まぁそんな感じだ」
「幼馴染みの黒子ちゃん?私、犬飼。よろしくね」
「東轟です?なーんかどっかで見たような……」
ヤバい、陽輔のやつこんな時に限って無駄に鋭い。
「じ、じゃあ俺たちはこれで。じゃあな!」
「おい、まだ試着が……」
呆気にとられている二人を置いて、嫌がるネロを引きずりながら店を後にした。
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