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「バレるのが嫌なら演技ぐらい付き合ってやるというのに……」
「だーから悪かったって……」
無理矢理引っ張りながら店を出たため、すっかりネロはへそを曲げてしまった。
「……そこのクレープを奢れ。そうすれば許す」
「……わかったよ」
「そうか、では行こう」
そう言ってネロがツカツカと歩き出した。
歩調はかなり速い。
「ハァ……」
俺は急いでネロの後を追った。
追い付いた頃にちょうどクレープ屋の前に着く。
「だからお前歩くの速いって……」
「……あたしはストロベリーだ。大地は?」
「話聞けよ……あぁ、バナナチョコで」
頼んだクレープが手早く作られ、俺たちの手に収まる。
クレープ代を払い、店を離れて近くのベンチに座る。
「ふぅ……」
「ふむ、なかなか旨い」
横に座るネロは既にクレープにかじりついていた。
俺もクレープを食べる。
「うん、旨い」
「…………」
「……なんだよ」
気付くとネロが俺を見ていた。
正確には俺のクレープを見ている。
「そっちも旨そうだな」
「はぁ?」
「食べさせてくれないか?」
「いやお前何言って……」
ネロが俺を見ている。
今度はクレープではなく俺の目をじっと見ていた。
「……わかったよ、やるよ」
俺のクレープを手渡すためにネロに差し出す。
「……あむ」
「おいおい……」
だがネロは受け取らず、そのままクレープに顔を近付けて食べた。
「うむ、そっちも旨いな」
「気はすんだか?」
「……ほら、あたしのも一口やろう」
「あ、あぁ、悪いな」
差し出されたクレープに手を伸ばすとそのクレープが離れていった。
「……まさか」
「そのまさかだ。ほら、口を開けろ」
再び眼前にクレープ差し出される。
そこに恐る恐る口を近付ける。
「……あむ」
「ふふ……旨いか?」
首を縦に振る。
「ほら、口にクリームがついているぞ」
ネロが俺の口についたクリームを指ですくい、そのまま自分の口に放り込んだ。
「ふふふ……」
「~~~~っ!!」
込み上げるものを飲み込むように残ったクレープにかじりついた。
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