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ゆったりと意識が浮上していく。
俺はこの意識と無意識の間を揺れているような感覚が好きだ。
だが起きてしまった以上は目を開けなければいけない。
無意識に寝返りをうつと足に何かが絡まった。
「ぁあ……?」
目を開けるとそこには褐色の少女が横たわっていた。
「…………?」
褐色の少女が横たわっていた。
「!!??!!??」
声にならない悲鳴が出た。
「ん……んう……?」
少女が目を覚ます。
この少女、どこかで見たような気が……。
「う……マス、ター?」
俺をマスターと呼ぶその声で思い出した。
こいつはネロだ。
…………
「一体どういうことだ?」
「俺が知るか!こっちが知りたいわ!」
俺のベッドに腰掛けている少女。
それは紛れもなくネロだった。
本人しか知らないようなクイズまで出して確認したのだから間違いない。
だがその姿は紛れもなく人間のそれだった。
「人間を模した体にあたしの意識を入れ込んだのだとしてもこの体は出来すぎている」
「体温もあるし、ちゃんと脈もある。マジで人間の体だな……」
そこでふとある事件が脳裏を過った。
「そういえば前に神姫が目を覚まさなくなるウィルスが流れたことあったろ?」
「あ、あぁ……それがどうした?」
「そん時にアーンヴァルによく似た学生が居たっていう書き込みがネットにあったんだよ」
「コスプレかなにかじゃないのか?」
「ウィルス騒動中にのんきにコスプレなんかするかよ」
もしかしたらネロの人間化となにか関係があるんじゃないかと思った訳だ。
「仮にそのウィルスが原因だとしても、あたしの本当の体はどこに行ったんだと言う話になるぞ?」
確かにネロの言う通り、本来クレイドルに横たわっているはずの本体がなければどうしようも無い。
「…………」
「…………」
「駄目だ。わからん」
「あぁ、そうだ」
ネロが何か思い付いたようだ。
「放っておこう」
「……は?」
「考えてもわからないことは無駄に考えてもわからない。ならばいっそのこと受け入れてみようじゃないか」
「うんお前何言ってんの?」
「せっかく人間になったんだ。今のうちに楽しもうと思ってな」
「戻らなかったらどうすんだよ……」
「その時はマスターの家で世話になるさ」
「……頭痛くなってきた……」
「さぁ、外に出るぞ、マスター!」
「だー、わかったよ……」
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