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「…ユキくん…」
パタリと箸をテーブルに置いた
彼女が俺をじっと見据える。
「うん?」
「どうして怒らないの?」
「何が?」
「だって…どの料理も
全然美味しくないのに…
何で言ってくれないの?」
半泣き状態で訴えて来る
千夏に俺は柔らかく微笑んだ。
「千夏が俺のために一生懸命
頑張って作ってくれた事に
感謝しているからだよ。
自分で食べてみて
美味しくないって
思ったのなら
次に作る時こそは
美味しく作ろうって
思ってくれたら
それで俺はいいの」
本当にそう思っていたから
言った言葉なのに。
千夏は泣きながら怒り出した。
「ユキくんはいつもそうやって
人の顔色ばかり
伺うような事言って…
いつになったら私に本音で
ぶつかって来てくれるの?」
「…千夏、俺は別に…」
「言ってよ!
自分が思った事をハッキリ
言ってくれなきゃ嫌だ!」
…駄々っ子かお前は。
若干呆れながら俺は
大きくため息を吐いた。
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