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「あのさ…。
スーツは洗濯機で洗っちゃダメ。
これはドライクリーニングだから」
服についたタグをひとつひとつ
千夏に見せて洗濯の方法を
細かく説明しながら
俺ってこんなに
神経質なヤツだったっけ?
なんて自分で疑問を感じつつ。
「…何も出来なくて
…ごめんなさい…」
泣き出しそうな顔で
そう言った千夏に
微笑みながら首を振った。
だけど…さすがにキツイ。
この様子じゃ本当に
何ひとつ家事は出来そうもない。
別に家事をして欲しくて
一緒に暮らし始めた
訳じゃないけど…。
まぁ…彼女の両親が
千夏をめいっぱい甘やかして
育てた事は何となく
分かっていたし
多少の覚悟もしてた。
しかし…
俺の予想をはるかに超えた
千夏の行動に、
振り回される日々が
どれほど自分に
負担を掛けて行くかなんて
思っても見なかった。
仕事をしている時の千夏は
テキパキしてるし
輝いているんだけど。
クライアントからの電話を
完璧に受け応えている
千夏の姿をぼんやり
見つめながら湧き上がる思い。
…まだ一緒に暮らすべきじゃ
なかったのだろうか…。
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