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それでも今更
千夏との同棲を辞めるなんて
言えるはずもなくて。
けれど仕事で疲れて帰っても
家事を千夏に教える生活は
徐々に俺自身の
余裕までをも失くして行く。
眠っても眠っても
体の疲れが取れなくなって
デザインも思うように
浮かばなくて息詰まる。
そんなある日の事、
久々に人事部長の栗田さんに
誘われて飲みに出かけた。
「小野と飲むのも久しぶりだな」
「そうですね」
千夏と同棲してからは
誰かと飲みに行くなんて
全然なかったしな…なんて
思いながらスコッチで乾杯する。
けれどスコッチをひと口
飲んだ栗田さんは
俺を覗き込んでポツリと呟いた。
「お前さ…
部下の女と同棲してるって噂
あれ、本当なのか？」
付き合い始めた頃も
こうして噂にされたけど
一緒に住むようになって
毎日一緒に出勤してれば
その噂が広まるのは
あっと言う間の事だったし
いつかは栗田さんの耳にも
入るだろうと覚悟はしてた。
別に悪い事をしている
訳でもないし…
俺は正直に栗田さんに話す。
「ええ、本当です。
でも来年の春には
入籍予定です」
「…それってさ…
香港勤務になったとしたら
彼女も一緒に連れて行くって事？」
「ええ、もちろん
そのつもりですけど…
何か問題あります？」
俺の質問に栗田さんは
微かに眉間にしわを寄せた。
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