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「…嬉しい…」
「はぁっ?」
ポツリと返って来た
千夏の言葉が理解出来ずに
聞き返した俺に、
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「だって…ユキくんが
初めて本気で怒ってくれた」
「……………」
「いつもユキくんは優しくて
私が家事が出来なくても
笑って自分がやってくれるし
仕事でミスしても
絶対怒らないで励ましてくれるし
そういうユキくんも好きよ。
でも一緒に暮らしているんだし
来年の春には結婚もするんだし、
ユキくんが本音で私に
ぶつかって来てくれないのが
ずっと寂しかった」
微かに潤み始めた千夏の瞳。
ドアを開け放って、
彼女はゆっくりベッドに歩み寄ると
俺の隣に腰かけた。
「朝帰りなんてしてゴメンなさい。
だけど、ユキくんに
こうして叱って欲しかったから
ダメなものはダメって
言って欲しかった。
いつもユキくんは我慢ばかりして
自分の思いを仕舞い込んで…
だけど私はユキくんの奥深くに
隠されている部分も
全部知ってるから…。
壊れてた時のユキくんも
私は嫌いになれなかった。
ううん、あの時のユキくんを
知ったからこんなにも
あなたを好きに
なったんだと思うんだ」
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