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「お前は前島さんの最後の作品は
自分たちが住む家にして欲しいって
思ってたみたいだけどさ…
今のプランニング課は
まだまだ彼女の存在を
失うのは辛いと思う。
だから…
せめて二人の子供が出来るまでは
彼女にこの仕事を続けさせて
あげてくれないか…?」
しばし沈黙していた東雲。
だけどフッと小さく笑って
それに答えてくれた。
「俺もそのつもりでしたよ。
コンペの間もずっと
そう思ってました。
香織のためにも、
今のプランニング課の
メンバーのためにも…
俺が日本に戻ったと同時に
香織を退職させるなんて事を
してしまったら…
恐らく新部長の俺の言う事を
誰も聞いてくれなく
なりそうですしね」
「ああ、間違いなくそうだろうな。
なんだかんだ言っても
今のプランニング課の
メンバーにとって前島さんは
目標であり女神だからな」
「…女神…ですか」
お互いがクスクスと笑いながら
顔を見合わせた。
これでもう…
俺が東雲と前島さんに
してやれる事は全て終わった。
あとは…
自分の幸せのために…
コインロッカーに隠してある
あのCD-Rを持って
彼女の待つ家に帰ろう。
千夏の想いが詰め込まれた
あの曲に導かれ…
二人歩み出す新しい地への
扉を開け放って…。
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