2983人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜、俺は朝日奈さんから
貰ったあのCD-Rと役所で貰って来た
その用紙を持って家に帰った。
「ユキくんおかえりー!」
キッチンから聞こえて来る
千夏の声に微かに緊張しつつ。
「ただいま」
平静を装ってリビングのソファーに
まずは腰かけて。
ふうっとひとつ深呼吸してから
すっかりリズム良く包丁の音を
立てる千夏に声を掛けた。
「千夏、晩飯はまだいいから
ちょっとこっちに来て」
改まって言った俺に
千夏は無意識に構えている。
…いや…別に怒ってないから。
どうも俺が呼びつけると
また何か注意されるとでも
思っているのかも知れないけど。
俺の気配をじっと伺うような
そんな瞳を向ける千夏に
ニコリと微笑んで、
テーブルの上にCD-Rと
封筒を差し出した。
「…何?これ?」
「まずはそのCD-Rをかけてみて」
首を傾げながらコンポに
CD-Rをセットした彼女。
やがて流れ始めたその曲に
ピクンと彼女の背中が反応する。
「どうしてユキくんが
これ持ってるの??」
ずっと黙っていようかと
思ってたけど…
もう何ひとつ隠し事はない俺で
この言葉を伝えたかったから。
最初のコメントを投稿しよう!