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そう思いながら見上げた空には
柔らかな日差しを与えてくれる
春の太陽が輝いていて。
「ユキくんお腹空いた!」
目をキラキラさせて
俺の腕を引っ張る彼女に
クスリと笑みを見せ足を進める。
子供のようにはしゃぐ千夏と
手を繋いで歩く香港の街並みは
10年前に暮らしていた頃と
驚くほどは変わっていないのに
全てが輝いて見えるのは
間違いなく彼女のせい。
たくさんの壁を乗り越えて
ようやくたどり着けたこの地で
これから俺と彼女は生きて行く。
何があっても、二度と
この手を離さないよう
しっかりと握りしめて
その瞳に語りかけた。
「なぁ千夏…。
俺を見つけてくれて
ありがとう」
一瞬キョトンとした彼女は
やがて極上の笑みを見せてくれて。
「私がユキくんを
見つけたんじゃないよ。
ユキくんが私を
見つけてくれたの」
運命なんて
信じた事はなかったけれど
隣で微笑む彼女を見つめて
改めてそれを思う。
俺と千夏は…
きっと運命で
導かれたんだろうなって。
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