エピローグ

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「千夏…綺麗だよ」 極上の褒め言葉を言ったのに プクッと膨れた千夏の頬。 その様子に前島さんや 東雲たちも俺と千夏に 気を使ってくれたのか 「じゃあ式場で」なんて言って ドレッサールームから出て行った。 静かになった部屋の中 頬を膨らませたままの千夏が プイッと俺から顔を背ける。 「千夏?」 回り込んで彼女を覗き込めば 微かに瞳を潤ませて 唇を噛みしめている。 「どうしたの?」 俺の質問に瞳だけ キョロっと向けた彼女。 「あんな優しい笑顔… 私以外に見せちゃイヤ」 「はっ?」 「前島チーフに向けた笑顔。 昔のユキくん、 そのものだったもん」 唇を尖らせて俯いた彼女に 思わず笑いが込み上げる。 …ホントにヤキモチ妬きな女。 「バカかお前は」 「悪かったわねバカで!」 「はいはい。 姫様、そろそろお客様に お披露目する時間ですよ。 一緒に来てくれますか?」 膝まづいて差し出した手に 千夏の尖っていた唇は ゆっくりと弧を描く。 「行ってやってもいいよ」 不敵な笑みを浮かべて言った 彼女の白い手袋に 軽くキスを落としてから 立ち上がる。 「お前… 今夜は寝かさねーから 覚悟しとけよ」 耳たぶを甘く噛んで 囁いた言葉に彼女の頬は 一気に赤く染まった。
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