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「無様でも彼女を
失いたくないと言い切った
あなたは同じ男から見たら
とても素敵だと思います。
カッコ良くなんて生きられない。
本当に欲しい女だったら
無様でも何でもそうやって
もがくべきなんだなと…」
どこか寂しそうに言った
朝日奈は今でも前島さんが
忘れられないのだろうか…。
「遥斗にしてもあなたにしても
愛している人だからこそ
失う事が怖くて向き合えない時も
あるって事なんでしょうね。
僕はまだそういう人と
出逢った事がないから」
「…いや…
朝日奈さんもそういう人と
出逢えたから今があるのでは
ないですか?」
俺の言葉に首を傾げた朝日奈に
フッと小さく微笑んで。
「前島さんを抱きしめていた
あの時の朝日奈さんは
少なくともそう見えましたけど」
唐突な言葉に目をまん丸くした
彼はプハッと吹き出して
肩を揺らして笑い出した。
「見られてましたか。
ええ、あの夜の僕は
とてつもなく無様でしたよね」
しばし笑い合った後
朝日奈は出来上がったばかりの
その曲をCD-Rに落とすと
俺に手渡した。
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