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「あ、でもこれはデモで
ボーカルは僕の今イチオシの
女性ボーカリストに
歌わせて録りなおしますね。
しかしこれが
加藤さんの想いの全てです。
彼女の想い、どうか
大切にしてあげて下さい」
「…ありがとうございます」
さすがに千夏にこれを
見つけられたら
照れる気もするけど。
俺が嫉妬に狂って
朝日奈の所にまで
押しかけてたなんて
彼女が知ったらどう思うだろう。
そんな事を考えながら
浮かない表情の俺に
朝日奈はまた小さく笑った。
「彼女には小野さんが
ここに来た事は
秘密にしておきます。
でもあと1度だけ、
これの正規版が出来上がったら
手渡すために加藤さんと
お会いさせて頂きますが
目をつぶってやって下さい」
ニコリと微笑んだその表情は
やっぱり東雲にそっくりで。
どこか憎めないその笑みに
思っていたよりもずっと
いいヤツだったんだな…
なんて思いながら俺も微笑む。
「朝日奈さん…
今度スケジュール空いてる時は
一緒に飲みに行きませんか?」
「いいですね。
業界人とばかりなんで
気を使うことなく飲める仲間が
欲しかったんですよ」
どこか悲しそうに言った彼は
東雲以上に孤独を感じて
生きて来たのかも知れない…
…そんな気がした。
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