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「………」
「………」
「…あの…」
「………」
「この前は、ごめんなさい。あたし、あまり覚えていないんだけど…ひどく取り乱してしまって…」
あの日は自分の事で精一杯で…
意識を失った後、二人がどうしたのかあたしは知らない。
「…いえ、取り乱したのは…私も同じです」
「……ひかりさん、こんな事…聞いていいのか分からないけど…」
「….……」
「……どうして、違う名前を使っていたのか…聞きましたか?」
あたしが言い終えるよりも前に、ひかりさんの目が哀しげに揺れた。
あ、この人はまだ何も知らないんだ。
案の定…
ひかりさんは、小さく首を振ると
目に涙を溜めて、あたしを見つめた。
「…何も話してくれませんでした。
ただ…“ごめん”とだけ言って…」
「………」
「……出て行きました…」
「………」
「……もうー…何がなんだか…分からなくて…」
「……ッ」
「ずっと一緒に居たのに…
今は…あの人が誰なのかすら分からない…」
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