命の重さ

8/26
前へ
/524ページ
次へ
後を追ってトイレへ行くと、しばらくして、真っ青な顔で個室から出てきた。 「…ひかりさん?大丈夫ですか?」 「………」 目に涙を浮かべたままあたしから視線を逸らす。 その身体が小刻みに震えている事に気付き、思わずその肩に手を伸ばした。 「ッもしかして…」 「………」 「妊娠…してるんじゃ…」 その言葉にビクッと反応したのを見て、確信へと変わった。 「その事…ナ、ナオ…ナオトは…知っているんですか?」 慌てて言葉を詰まらせると、ひかりさんは小さく首を振った。 「そんなぁーー…」 「………」 洗面台で静かに手を洗う背中が、ひどく小さく見える。 きっとあの日から、不安でたまらなかったんだ。 大切な人を失い… 大切な命をその身体に宿して… 「いつ…分かったんですか?」 ずっと独りで抱えていたんだーー…
/524ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加