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後を追ってトイレへ行くと、しばらくして、真っ青な顔で個室から出てきた。
「…ひかりさん?大丈夫ですか?」
「………」
目に涙を浮かべたままあたしから視線を逸らす。
その身体が小刻みに震えている事に気付き、思わずその肩に手を伸ばした。
「ッもしかして…」
「………」
「妊娠…してるんじゃ…」
その言葉にビクッと反応したのを見て、確信へと変わった。
「その事…ナ、ナオ…ナオトは…知っているんですか?」
慌てて言葉を詰まらせると、ひかりさんは小さく首を振った。
「そんなぁーー…」
「………」
洗面台で静かに手を洗う背中が、ひどく小さく見える。
きっとあの日から、不安でたまらなかったんだ。
大切な人を失い…
大切な命をその身体に宿して…
「いつ…分かったんですか?」
ずっと独りで抱えていたんだーー…
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