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無言のまま二人で席に戻ると、目の前のひかりさんは俯いたまま、ホットティーを一口飲んだ。
「…こうなる前から、分かっていたんです」
その瞳を哀しく揺らしながら、カップを静かに置いた。
「な、なんで…、なんで言わなかったんですか…?」
「…言えなかったんです。受け入れてもらえる自信が…なかった」
「そんなぁ…」
「あの人と出逢ってもう4年になります。
でも、あたしは彼の事何も知らない。
どこに住んでいたのかも、どうして東京に来たのかも…」
「………」
「そこに触れたら傷付けてしまいそうで…ずっと怖くて聞けなかった」
「………」
「でも、それでもいいかなって…
今、一緒に居られればそれでいいかなぁって…
そうやってずっと逃げていたら
こんな事になってしまいました…」
「ひかりさん…」
声を震わせながら言葉を繋ぐひかりさんの瞳から、涙が一粒頬を伝った。
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