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ひかりさんと別れ、どこにも寄る事なく真っ直ぐ家へと帰った。
部屋は相変わらず段ボールだらけで、自分の居場所じゃないみたい。
いや、故郷を捨てたあたしに
居場所なんて初めからないんだけど…
ベッドに倒れこみ、天井を仰ぐと
さっきひかりさんに告げた言葉が
頭の中をループする。
“死んだお兄さん”
グルグルグルグルと、ただその言葉だけが頭の中を占領して…
ドクドクと鳴り響く鼓動があたしを責める。
“死んだお兄さん”
“ナオトの死んだお兄さんの名前です”
その一言を発した瞬間、あたしは気付いてしまったんだ。
今まで自分が必死に守ってきたものを…
ずっと、ずっと、誤魔化して
うやむやにして…
分かっているのに、
分からないふりをしていた想いを…
無意識に口から出てして
初めて理解したんだ。
プルルルルー…プルルルルー…
遠のく意識の片隅で電子音が鳴った。
プルルルルー…プルルルルー…
どんどん深みに落ちていく思考
プルルルルー…プルルルルー…
まるでそれを食い止める様に
あたしを呼ぶ。
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