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「今日来るんじゃねーの?アッキー待ってるよ」
「電話出たんか?なんでオレのはシカトで、ナオトのには出るんや!」
電話の向こうからは、アッキーの文句が聞こえる。
「知らねーよ!」
それに返すナオトは笑っていて、「早く来いよ」なんて、なんでもないように言う。
ひさ君の事も、ひかりさんの事も…
過去も今も…
なんでもないように
笑ってあたしの名前を呼ぶ。
「…リコ?」
「………」
「…おーい、リコ?」
「…ナオト」
「ん?」
「あたし今日…」
「うん」
「……ひかりさんに会った」
昨日までは自分も同じように笑っていたくせに、急にそれが、腹ただしくなった。
今、呑気に笑える状況なんかじゃないのに。
あたしのために身を引いてくれた慎吾も…
あたしのせいでナオトを失ったひかりさんも…
罪のない小さな命も…
このままじゃ、また傷付けて失ってしまうのに、
あたし達は、逃げてばかりで…
だからいつも
大切なモノを守れないんだ。
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