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その瞬間、また頭の中には自分の声が響く。
“ナオトの死んだお兄さん”
ひさ君は、ナオトの死んだお兄さん。
その通り。
何も間違っていない。
だけど、その言葉を口にした瞬間ーー…
鳥肌が立って、息を吸う事すら罪に想えるほどの罪悪感に襲われた。
だって…
ひさ君は、あたしの恋人だったのに。
あの時あたしは…
自分の“恋人”ではなく…
“ナオトのお兄さん”と、口にした。
その時に気付いたの。
心の中にはいつもナオトがいて
それが当たり前の世界にいた。
その中でひさ君に憧れ、恋をして
そして、傷付け…失って…
あれからもう何年も立つのに…
あたしの世界は、やっぱりナオトが中心なんだ。
死んだ恋人ですら、無意識に“ナオトのお兄さん”って言ってしまうほど……
あたしはずっとそうやって生きてきたんだ。
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