命の重さ

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「適当に座って」 キッチンに入りお湯を沸かす。 続いて部屋に入ってきたナオトは、入り口につっ立ったまま眉間にシワを寄せた。 「引っ越すの?」 「…ううん」 「じゃなにこれ」 視線の先には幾つか積まれた段ボール。 「ちょっと、整理してて…」 「ふぅーん」 不自然な言い訳を信じたかは分からないけど、気のない返事をしながら部屋をグルッと見渡し、ソファーの下に腰を下ろした。 「コーヒーでいい?」 「うん」 「………」 「………」 お湯が沸いた音。 棚からコーヒーカップを取り出す音。 それがやけに響いて、緊張する。 「はい、どうぞ」 「どうも」 ぶっきらぼうに言うと一口だけ飲み、あたしを睨んだ。 「てか、呑気にコーヒー飲みに来たわけじゃないんだけど」 「分かってるよ、そんなの」 「お前のせいで今日グラス3つも割ったし」 「は?それ、あたしのせいなの?」 「お前のせいだろ?突然あんなこと言うから」 昔のようなナオトとの言い合いに、少しだけ緊張が和らぐ。
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