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「ひさ君と付き合っていても、あたしにとってはやっぱり“ナオトのお兄さん”でしかなかったのかもしれない。
ナオトの存在は変わらず特別で
自分じゃ気付かなかったけど、
ずっと一番だった…」
「………」
「…きっとひさ君は、それに気付いていたんだね。でも…」
「………」
「…ナオトも、気付いてたんでしょ?」
俯いて黙って聞いていたナオトは、突然顔を上げ天井を仰ぐ。
「あぁーあ」
大きく息を吐き出すと、薄茶色の瞳を真っ直ぐ向けた。
「気付いてたよ。……自惚れるくらい。
でもリコは…俺じゃなくて、ひさしを選んだ」
「……うん」
「だからすげームカついた。なんか悔しくて、うまくいかなきゃいいのにって思いながら、ひさしに当てつけるようにリコと一緒に居た」
「……うん」
「それがひさしは面白くなくて、リコに冷たくしてんのも分かってたけど…
そうやっていつまでも俺の側に居ればいいって、思ってた」
ナオトがひさ君の名を口にする時も
ひさ君がナオトの名を口にしていた時も
分かりやすいほどにトゲがあって…
その度に、二人をこんな関係にしてしまったのは自分だって思ってきた。
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