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ピザ。それは生地を丸く薄く伸ばした物に具を乗せ焼いたイタリア料理。またはネットスラングで、ピザを毎日食べたような体型の人間、即ち、太った人間の事を言う。
ピザ。それは僕の主食、ではなく、あだ名。勿論先程述べた、後者の意味だ。一応ではあるが高校デビュー、ある意味成功だと言えるだろうか。何故このあだ名になったか、それは入学式の後、自己紹介時のやり取りに起因する。
「僕の名前は駒田哲郎です。趣味は読書でと――」
「引っ込めーピザー」
自己紹介の最中、そんな声を掛けられた。悪意は無い感じだが、自己紹介を遮られたのは、あまり気分が良くない。だからこう返してやった。
「誰がピザだ。ピザは僕の腹の中だ」
「ちょっ、朝からピザ食ったのかよ!?」
その言葉で教室は爆笑。チャンスだと思った僕は、こう畳み掛けた。
「そうだ、ピザは僕の血となり肉となり、僕の体を構成するのさ」
「どう見ても肉にしかなってねえよ!?」
その言葉でまた爆笑。アドリブにしてはなかなか良い返しが貰えた。こうして僕は、クラスのムードメーカーの地位と、あだ名『ピザ』を得た。ちなみに声を掛けた田仲とは、今は親友となっている。
ちなみに後日談だが、田仲とは中学校が同じだったらしい。その頃のあだ名がイベリコで、皆を笑わせてた事を知ってたらしい。その辺の耐性を知ってたから、自己紹介で茶々を入れたそうだ。
だが、問題点が一つある。実は僕、ピザが嫌いなんだ。チーズから溢れるベトベトの油に、強烈な臭い、極めつけはトマトソース。駄目だ、食べられない。名前を聞くのも遠慮したいくらいだ。それなのに、あだ名がピザとは、よろしくない、全くよろしくない。
僕は勝負に出た。決戦の日は、体力測定の日。僕には一つ、自信のある項目がある。それは反復横とび。中学では卓球部で沢山こなした練習だ。一切痩せなかったが。僕は集中力を高め、先生の合図と同時に動き出した。
「うぉ、ピザはええ!?」
「マジかよ、俺よりはええ!?」
「あいつ、あんな特技あったのか」
結果は五十回、大成功だ。その項目だけ、クラスで五番以内に入ることが出来た。……他のは、聞くな。だがこれであだ名が変わること間違いなし。僕はピザの呪縛から解放されるのだ。
翌日から、僕のあだ名は『宅配ピザ』となった。
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