咎の子

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それから120年後、風の王の子孫の男と水の王の子孫の女が結婚し子供を身ごもった。 人々は祝福した。 女が陣痛を訴えたとき雪が降ってきた。 しかし120年前の魔王の言葉などもう忘れ去られている時代だ、人々は特に気にしていなかった。 だが、産声とともに起こった出来事に人々は恐怖した。 木が、川が、池が、凍りついたのだ。 そして人々は漸く思い出した。 「氷雪の魔王の子だ」 「戻ってきたのだ」 「呪われた子供だ」 「殺せ」 「不吉だ」 「殺してしまえ」 人々は嫌がる親から生まれたばかりの赤ん坊を取り上げ、川に流した。 しかしそれだけでは終わらなかった。 「2人を離婚させねば」 「また魔王の子供が生まれるぞ」 こうして夫婦は無理矢理離縁させられた。 それからこの二つの民族はお互い余所余所しくなっていき、いがみ合うようになった。 風の王の子孫に風花の民、水の王の子孫に水面の民、そう名前が贈られた後でも、お互いの民族を「凶風」「泥水」と現在に至るまで口汚く罵りあっていた。 しかしそんな仲でも、愛を育み子を儲ける者も、ごく少数だがいた。 だが、嗅ぎ付けてきた者たちに邪魔をされ、子供を川に流され挙句に無理矢理離縁させられてしまうのだった。 現在では風花の民と水面の民の混血は「咎の子」と呼ばれている。 「咎の子」の意味は「親の咎(禁断の愛を育み、子を儲けて誇り高き民族の血を穢した罪)をすべて背負い流される子供」である。 そしてこの「咎の子」を川に流す行為を「罪を洗い流す」という意味の「罪流し」と呼ばれている。 そしてこの話はそんな「咎の子」のお話である。
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