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もう一度握り締めようとすると、ふわっと途端に軽くなる手の感触。
びっくりして手の方を見ると、上総がさっきと同じ顔で私のマグカップを持っていた。
そのマグカップを机に置いて、今度は私の腕を取る。
「どうして俺から逃げるの。お前はこっち」
ぐっと引っ張り上げられて上総が座っていた場所の横に動かされた。
続いて彼も隣に座る。
上総は無意識なのかもしれないけど、いつもより二人の距離が近いような。
ううん、違う。
上総はわざと私との距離を詰めてきてる。
だって、私がソファーの端に移動していくのと比例して彼がどんどん近づいて来てるもの。
少しずつ、少しずつ彼から離れるようにソファーの革の上を滑っていく。
彼もまた、相変わらず不機嫌な顔をしたままこっちに寄ってくる。
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