chart9

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「あ、ちょっと!待って!」 叫んだ言葉も虚しく、私は広い会議室にぽつりと取り残された。 走り去っていく明子ちゃんには届かなかったみたいだけど。 というか、逃げられたみたいね。 こんな広い所に一人だけ置かれても困るのに、彼女は聞く耳も持たないで会議室から飛び出していってしまった。 別に今日こんな事するためにここに来たわけじゃないのよ? ましてや明子ちゃんを困らそうとした訳でもない。 不意に襲ってきた倦怠感に負けて、溜め息をつきながら机に突っ伏した。 上総との婚約を破棄しに来ただけなのに。 真っ暗な世界に目を閉じる。 上総と私は昔からの友人で所謂幼馴染みと呼ばれるような関係。 それに、物心ついた時にはもうお互い婚約者同士だった。 決められた関係が嫌で、親が勝手に決めた将来なんて歩みたくなかった。 それどころか、相手の上総は出逢った時から一目惚れした女の子にずっと頭から離れないほど夢中になっていて、私が入り込めるような隙なんて一切なかった。 それでもまだ若かった私たちに婚約を取り消すような事は出来なかったから、お互い自由に恋愛をしていた。 大学に入っても、社会人になってもその状態は全く変わらなくて。 むしろ、彼は一目惚れした子を自分のモノにしようと必死で頑張っていた。
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