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「おい」
自分でも驚くぐらいの低く威嚇した声が繁華街のガヤガヤした空気の中で響いた。
「俺の女に何してんの?」
勝手に俺の口からこぼれ落ちる有りもしないウソ。
もちろん俺の女でも何でもない。
嘘っぱちもいいとこの嘘だ。
でも、これくらいしか今の熱の上がりきった俺の頭では考えられなかった。
俺を見上げている明子の視線が痛い。
何言ってんだよ、って。
そう言ってるのかもしれない。
目の前の男の顔は不機嫌極まりないし。
「......誰?こいつ。さっきの人達の中にいた人だろ?」
誰とか、
笑わせんなよ。
あんなに俺を見て威嚇してきたのに何言ってんだ、コイツ。
ちゃんと俺の事マークしてたじゃねーか。
さっきお前にやられた分だけきちんとお返ししてやるよ。
「こいつの彼氏だけど?俺が責任もって家まで連れて帰るからもう消えてもらっていい?」
え...あの...と狼狽えている明子はとりあえず放っておく。
空気読んでちょっとは俺に話合わしてこい。
嘘でも幻でもなんでもいい。
何が何でもこの男の前から明子を離れされたい。
それだけだ。
この男の顔見てるとなんだかイライラしてくる。
あ、そうか。
明子が盗られそうなんだ、当たり前か。
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