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「尻のポケットから鍵とって。右のとこ」
「下ろして自分で取ればいいじゃない...」
「下ろしたらお前大のとこに逃げるだろ」
そこまでして逃げようなんて、もう思ってないわよ。
今更逃げる力なんて残ってない。
ムッとしながらポケットに手を伸ばして鍵を取り、上総に手渡す。
ガチャっという鍵を回す音が悲しく響いた。
次このドアを出るときはどんな私なんだろうと思いながら、久しぶりの上総の家に入る。
久しぶりの上総の家は一週間前と何も変わってなくて、当たり前だけど彼の匂いが鼻孔をくすぐる。
電気もつけない暗い玄関。
目が慣れるまでほとんど何も見えなかった。
目が慣れてきてやっと下ろしてもらえた私に、
「もう逃がしてなんかやらねーよ」
後ろ手に鍵を閉めた上総がニヤリと笑ってそう言い放った。
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