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「うそォ...」
結婚するふたりの名前を見た明子から間抜けな声が漏れた。
当然だけど、俺の名前なんてどこにも印刷されていない。
あるはずがないから。
もちろんそうなるのは見せる前から知ってた。
明子のことだから病院で広まった噂を鵜呑みにして、そのままここまで拗らせてしまったんだろう。
ちょっとは俺を信じろよ。
っていう、俺もちゃんとした事言わずにこの場までうだうだしてたのは事実。
俺の非の方が大きいのかもしれない。
「これで納得した?」
「早とちりしてごめんなさい...」
しゅんとして上目遣いでこっちを見る姿は俺を刺激する。
俺はだいぶ重症みたいだ。
項垂れる彼女もかわいいなんて。
変態なのかもしれない。
...それでも明子が手に入るならなんでもいいし、気にしないけど。
不意に座り込んでいた明子が立ち上がって俺をぎゅっと抱きしめた。
明子から動いて来るなんて思わなかったから、ピクリと少しだけ身体が震えた。
それを目敏く気付いた彼女が不安げに上を向いて、
「いや...?」
そう掠れた声で問う。
今にも泣きそうな声だった。
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