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「ちょっ、なにっ!?どこ行くつもり!?」 肩の上で盛大に暴れてくれるな。 明子は足と手を存分に使って必死に抵抗する。 そんなに動いてうっかり落としたらどーすんだよ。 こうやって少しでも彼女を抱いている手を緩めれば、 「きゃっ!」 な、こうなるだろ。 身の危険を感じたのか明子は大人しくなって手足をばたつかせるのを止めた。 だから、大人しく俺に従っとけばいいんだよ。 こんな匂いとっとと消してやるから。 ジャーというシャワーの音が浴室に響く。 「冷たっ!上総何してくれてんのよ!」 明子の怒る声もついでに。 「何って?お前からする匂い消してんの。......大と同じ匂いなんてさせやがって」 嗅いだときから誰の匂いかなんてすぐ分かった。 大と明子が従兄妹同士で、恋愛感情なんて存在しないことくらい知ってる。 それでも大と同じ匂いを纏わせていた事が何よりも気に入らなかった。 一緒に生活していれば必ずその相手の香りに染まる。 ついこの間までは俺の香りを纏わせていたはずなのに、この一週間ちょっとで大の香りに移り変わっていたことに自分でも引くくらい嫉妬している。 明子は短い間でも大の香りを周りに振りまいていたんだ。 病院だと消毒液とかの独特な匂いで鼻が利かなくて、今まで気づけなかったことが悔しい。 どんだけ独占欲強いんだよ、俺。 それとも、 情けないくらい明子に見てもらえる自信がないわけ? どっちにしたって滑稽だ。 ここに大や麻里亜がいたら散々バカにして笑い転げているだろう。 年下の女の子一人捕まえておくのがやっとなのか、って。 だけど、 そんな無様な姿だったとしても、 それでも明子が欲しい。 「早く消してくれよ...っ」 俺はもう一度明子に噛み付いた。
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