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どうか幸せだと思わせて。
私にはあなたしかいないの。
「かずさー?なんか作るけどリクエストある?」
シャワーを浴びて戻ってきた上総に問いかけながら冷蔵庫を開けると、中はビールやペットボトルだらけで食べ物になるような物はほとんど入っていなかった。
見事に空っぽ。
異常に多いビール類にばかり目が行く。
一週間前はちゃんと入ってたはずなのに。
上総もそれなりに自炊をする方だからこんなに何も入ってない冷蔵庫を見るのは初めてだった。
「何にも入ってなくて驚いた?」
「うん...。どうしたの?」
「気ィ抜いたら二人分作っちゃいそうで、お前が帰ってくるまでずっと外で済ませてたからな。たしか前に明子が買ってた粉末のスープとかなら残ってると思うけど...」
カウンター越しに頬杖をついてる彼は何故か嬉しそうに目を細めて微笑む。
「俺のがやっと戻ってきた」
さっきから上総が放つ言葉一つ一つが嬉しくて思わず抱きつきたくなるほど。
無意識だと二人分作ってしまうくらい私の存在が上総にとって日常なっていたなんて。
どんな殺し文句よ。
今幸せすぎて泣いちゃいそうなんだから。
「当分逃げてあげるつもりはないから、よろしく。あ、コーンポタージュで大丈夫?」
私だってサラッと言ってやる。
当分上総から離れてあげないんだから。
......ずっと逃したりなんてしないでね。
「こっちも逃してやるつもりも毛頭ないから覚悟して」
さっきの少年みたいな微笑みはどこに行ってしまったのやら。
急にそうやって妖艶な笑みに変えるんだもの、心臓が持たない。
返事をするどころか頷くので精一杯。
すぐに俯いて沸かしたお湯を粉末の入ったスープカップの中に慌てて注ぎ込んだ。
照れ隠しだと明らかにバレバレ。
クッと喉を鳴らして小さく笑った彼はソファーの方に向かっていった。
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