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そんなことよりも、
「嫉妬してた私がバカみたいじゃない...。ずっと麻里亜さんのとこにいるんだって思ってた」
思わず口から溢れてた。
やだな...
泣きたくなんてないのに。
勝手にポロポロと涙が頬を滑り落ちる。
拭っても流れる涙は止まらない。
泣くことで男の人脅しているみたいで嫌な気分になる。
泣いたら全て終わるような安直な考えのバカ女だって思われてしまうような気がするから。
それを見た上総はギョッとした顔で私の傍により、びっくりするほど強い力で抱きしめた。
「か、上総?」
名前を呼ぶとまた彼の腕がきつく私の体に巻き付く。
「ごめん、そんな不安にさせてたなんて知らなかった。もうどこにも行かないから安心しろ。泣くなって」
彼の優しい言葉にまた涙が溢れた。
上総の体温が醜い嫉妬心を溶かしていく。
温もりがこんなに汚い心を浄化してくれるものだったなんて知らなかった。
こんな醜い嫉妬する女でごめんなさい。
次あなたの顔を見つめるときにはもっと純粋な自分でいられるようにするから。
今だけはそうやってぎゅと抱きしめていて。
────なぁ、明子。
上から降ってきた声にビクッと顔をあげる。
なんだか急に真剣な声色になったから。
さっきの甘やかすような声じゃない。
もっと重たげな何か。
まだ内容は言われてないのになんだか怖くなる。
だけれども、
そんなに怯えなくていいからと諭す彼は声とは違って柔らかい表情を浮かべていた。
「大事な話してもいい?」
「...え?」
「今のお前みてやっぱり伝えようって思ったから。今言わないときっと後悔する」
上総が意を決したかのように自分の部屋まで戻ってしまった。
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