4886人が本棚に入れています
本棚に追加
/448ページ
何を伝えようとしてるの?
今の私を見て何か決心出来るような事があったの?
全然私には上総のしたいことが分からなくて。
一人ぽつりとリビングに取り残された。
昼下がりの日の光が差し込むここでリビングにいるのは私だけ。
彼の部屋がある向こうからはなんだか物を探すような音が聞こえてくるし。
さぁ、一体。
私はどうしてればいいのでしょうか。
動き出すべきなのか、
大人しく彼がやってくるのを待つべきなのか。
考えている間に、急にバンっと勢いよくドアが開いて、2枚紙を掴んだ上総が入ってきた。
一枚はA4の紙なのに、何故かもう一枚は小さく折りたたまれている。
「なに?その紙どうしたの?」
あぁ、と小さく呟く彼はテーブルの上にその紙たちを静かに置いた。
見覚えのある紙に嫌でも目が行ってしまう。
あの日の書類だった。
ちゃんと今でもしっかり覚えてる。
私がちゃんと呼んでいなかったせいで始まったこの契約を証明してしまう大事な大事な書類。
つまりはこの生活を導いてくれた契約。
あの日を振り返るとちゃんと読まなかった自分に少しだけ感謝をする。
もしあの日上総とこの契約を結ばなかったら───────
今の私と彼はいなかったかもしれない。
最初はあんなに嫌で仕方がなかったのに、今となってはこんなにも愛しい存在。
あれだけ上総を嫌ってた昔の自分に教えてあげたいくらい。
「これどうするの?」
「この契約を破棄する」
えっ!?と間抜けな声が出てしまった。
今まで過去に浸ってたのに突然現実に戻されてしまったような気がして。
最初のコメントを投稿しよう!