chart16

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「破棄って...どういうこと?」 泣いてしまわないようにぐっと堪えながら発したせいで、声が震えているのがよく分かる。 泣くな。 ずっと泣きっぱなしの弱い女だと思われたくない。 聞きたいことがあるならちゃんと聞かないと。 また誤解とすれ違いの堂々巡りだ。 そんなのはもうたくさん。 彼を手放したくなんてないの。 「俺と明子の契約的関係を切るってこと。今までの関係とはサヨナラ」 上総はなんの躊躇いもなく紙を二つに破り裂いた。 紙が破れる乾いた音がやけに耳に響く。 破れた紙は静かに宙を舞って床にに落ちた。 破ることを止める隙さえなかった。 ...私に選択する権利はないってことなの? 契約の時も強引だったのに、終わる時でさえも私には何も言わせてくれない。 「...上総のバカ」 「はぁ!?なんで?」 「どうしていつもいつも自分で決めちゃって、私の存在は無視なの?」 もう怯まない。 言いたいことは言わなきゃ。 上総と本当に心を通わすためにはそれが大切なことだと知ったから。 「それは悪かったと思ってる。だけど、お願いだからもう少しだけ話聞いてくれ」 俺は話すのが下手だから。 上総はそう言ってもう一度ごめんと謝った。 その姿があまりにも小さく見えて。 上総の姿が小さい頃のかーくんに重なる。 破った契約書を机に置いた彼は小さく畳んであった何かの紙を掴んで、躊躇いがちに広げ始めた。 さっきの勢いはどこにいったのか。 一度開く手を止めてこっちをチラリと見たと思ったら、また紙に目を落として開き始める。 あんなにいつも色々なことを器用にこなす上総からとても想像が突かない。 そんな姿。 だけれども。 全て開ききった時、 ─────────言葉を失った。
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