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いつもからかってばかりいる彼が逆にからかわれる立場にいるなんて面白い。
たまには私だって上手になりたいもの。
「ねぇ、教えて?」
「こっち向くなって」
照れ隠しなのか、必死に私から顔を隠すように手でブロックしようとしてるけど。
逆にそれがバレバレだって。
必死でなんかかわいいし。
大人の男にそんな事言っていいのか、どうか。
「あっー、くそっ!教えるからそんなに顔近づけるなって!」
かわいすぎて困るんだよ、とムッとした顔でそう言う。
また、恥ずかしい事をそうやって簡単に言うんだから。
やっぱり優位に立つなんて無理なのかもしれない。
「何回もお前にプロポーズしようとしたけど、ダメで。その度に小さく折って捨てようとした跡ってわけ。これで満足か?」
終始仏頂面のままで。
でもそれは照れ隠しでしょう?
「じゃあ、それは上総からの愛の跡だね」
「...何言ってんだよ」
コツンっと小さくデコピンをして、机の上に置いたままの婚姻届を手にした。
「まぁ、だからこの紙くしゃくしゃだし、明子が嫌なら新しいのもらってくるぞ?」
「いい!この紙じゃなきゃダメ」
即答だった。
考える必要なんてない。
上総か何度も悩んでくれたそれじゃないと意味がない。
それがいいんだ。
「あんまりかわいい事言うとまた襲いたくなるだろ」
あぁ、まずい。
さっき面白がった分倍にして返されそうなくらいの満面の笑みを浮かべて。
上総に勝とうなんて到底果たせるような目標じゃない。
とりあえずは、上総に翻弄されないようにしないと。
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