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「余計なお世話だ。知っていることを話せ」
「知らない」
「その娘とどこかで会っているはずだ。補導歴はないが多分スリの常習犯だ。背格好は百五十センチ程度で小柄、顔立ちは目がパッチリとしていて髪は三つ編みだった。心当たりがないとは言わせない!」
十無は必死だった。
かなり切羽詰っている。いつもは穏やかな十無が、昇が驚くほど語彙を荒げていた。
アリアは少女の風貌を聞いてから、首をかしげて少し考え込んだ。
「その娘ってもしかして……」
双子はアリアのほうに身を乗り出した。
「そういえば同じ頃に同じようなことがあった。知らない女子高生に突然ぽんと背中を叩かれてアリアまたねって……」
アリアは一瞬顔を強張らせてまさかあの子が盗んだのか。と、アリアが呟いたのを双子は聞き逃さなかった。
「何かなくなったものがあるんだな?」
「実は……でも失くしたと思っていた」
「いったい何を盗られた?」
「たいしたものではないけれど」
アリアは口ごもった。
「どうせ盗品だろう」
「おまえ、スリのくせにスリにやられたのか」
今度は双子がニヤニヤした。
「刑事さんと一緒にしないでよ」
そう言って、アリアはふくれっつらをした。
その仕草が、ちょっぴり可愛いと思ってしまった昇は、慌てたのだった。
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