椿姫の場合

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彼女にとって、初恋だった。 「起立」 その声で我に返る。 ぼうっとしていたのを笑い、人差し指で頭をつかれた。 「妄想してた?」 「そんな訳ないでしょう?」 「はは。」 無邪気な笑顔には、胸が高まる。 そこで、いつまで経っても号令がかからない。 「そこの二人、やり直し。他の人は座って宜しい。」 教室に笑い声が広がる。 恥ずかしさで顔が赤くなりつつ、礼をして席についた。 「馬鹿。」 「うるさいわね!あなたのせいよ!」 教科書を開いた。 しかし、動揺から、違う教科書を開いた。 それをみて、彼は噴いた。 「天然生物がいる。」 そう言いながら。 その笑顔に、またときめいたりする。
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